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2021-2-4 update

日置 寿美子講師 ~ひとりひとりに最適な指導を~

受験コースコラム第3回は、スガナミミュージックアカデミーでピアノを指導している日置寿美子講師によるお話です。
欧米を中心に、毎年10ヶ国以上でマスタークラスを開催していた世界的に有名なG・シェベック教授は、日置講師が最も尊敬している演奏家の一人です。
米・インディアナ大学へ留学され、シェベック教授のもとで学び、得たものとは。
興味深いお話を頂くことが出来ました。

“Piano playing is like a business. You invest minimum and you gain maximum.”
(ピアノの演奏とはビジネスのようなものです。最低限の投資で最大限の利益を得なければなりません。)

後にインディアナ大学で三年間師事することになったG・シェべック教授の前で最初に演奏した時に言われたこの言葉に、当時桐朋学園大学三年生だった私は大きな衝撃を受けた。それまでにもヨーロッパから来日される錚々たる先生方のレッスンを数多く受けていたが、その殆どは「この曲はこう弾かなければなりません」というものだったからだ。また、フランスに行けば当然フランスものを、ドイツに行けばドイツものを中心に、深く勉強することになるのだが、様々なものを幅広く勉強したかった私には留学先を一つに絞ることが難しかった。シェべック教授はハンガリー人であるから、当然ハンガリーものは大のお得意であったが、それ以前に、生徒とピアノとの関係性を深く考察し、同じ曲を弾いても一人一人に全く違うアドヴァイスをされる。そこに惹かれて、卒業後に渡米した。

「クラシック音楽と言えばヨーロッパ」という概念は現在も汎く浸透していると思われるが、アメリカの音楽会を牽引してきたのは実は、戦争前後にヨーロッパやロシアから亡命したユダヤ系の音楽家達である。留学前はそんなことも殆ど知らず、いかにしてTOEFLの合格点を取るかばかりを考えていたので、向こうに行って次第に事情が解ってきたという、のんきな状態だった。

シェべック教授のピアノクラスでは個人レッスンの他に、毎週午後8時に可能な限り全員(確か23名位)が先生のレッスン室に集まって行うマスタークラスというのがあった。各回2~3名が演奏し、皆がその演奏に関してああだこうだと意見を言い、最後に先生がまとめる、というものだった。そのためには当然英語力が必要だが、それより大事なのは、様々な作曲家や個々の楽曲に関する知識や意見で、自分の持ち曲を弾いているだけでは、何も言えない。クラスで純粋のアメリカ人は二人だけだったが、留学生も実に良くしゃべり、イスラエルから来ている女の子などは話し出すと20分は止まらないので、皆少し辟易した憶えもある。

私は幼い時から桐朋学園の音楽教室に在籍して、ピアノの他に聴音や作曲、アナリーゼなども勉強していたので、子供の頃はピアノをやることに何の苦労も無かったのだが、中学生になると技術的な問題にぶつかり、弾けない曲が出てきた。高校に入ってから、友人の紹介で当時メソッドを開発中だった御木本澄子先生の元に通い、大学四年時には日本音楽コンクールに入賞した。しかし、留学先では当初「指の音が聞こえるから、それを消して」と言われ、戸惑った。シェべック教授の言うテクニックとは、身体全体をコーディネートさせて機能させるというものであり、指の分割した訓練には反対であった。最近になってその意味がようやく本当に解ってきた気がする。しかし骨格等の違いから、日本人には御木本メソッドが有効な場面が多いことも確かである。

さて、現在も私は常に「もっとこの曲にふさわしい弾き方があるのではないか」と考えており、生徒一人一人に合った弾き方や練習方法を探している。自分の演奏の研究が指導に役立つことは勿論だが、実はその逆の方が多いかも知れない。つまり、生徒に指導した方法を自分でやってみると、とても弾きやすくなったりするのである。自分では無意識にやっていることを「どうしたらそういう音が出るんですか?」と訊かれて自分の弾いている方法を改めて観察し、「あ、こうやってました!」などと言うこともある。 私にとって、教えることは発見の連続であり、熱心な生徒さんを指導する時間はかけがえのないものとなっている。

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